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民法改正(債権法改正)― 錯誤

意思表示に錯誤があった場合

 

【ポイント】

(錯誤)

意思表示に錯誤があった場合に、その錯誤が意思表示をするのに重要な部分の錯誤(要素の錯誤)であった場合、これまで無効とされていました。たとえば、車を100万円で売ろうとしたところ、10万円の値札をつけてしまった場合(表示の錯誤)、その法律行為は無効となりました。あるいは、近くに新幹線の駅ができると聞いて、いずれ価値が上がるであろうと思い、土地を購入した場合に、よく調べてみたらデマであった場合(動機の錯誤)、その動機が法律行為の基礎として意思表示に含まれていた場合には、やはり無効とされていました。しかし無効とはいえ、錯誤による無効は、かかる当事者が主張すること(表意者保護の規定)であることに着目し、取消しと類似していたため、新法では取消すことができると改められました。また、錯誤の要件である要素に「法律行為を基礎とした事情」を掲げ、一定の場合には動機の錯誤も取消しの対象となることが明文化されました。錯誤の効果を「無効」から「取消」に転換したことで、取消の主張がなされるまでは法律行為として有効であり、民法120条以下の規律が適用されることになります。

 

【参考法令等】

2020年4月1日施行

民法第95条(錯誤)

1 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、(1)の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。